乾癬(尋常性乾癬:じんじょうせいかんせん)とは
尋常性乾癬とは、なんらかの原因で皮膚のあちこちに皮むけを伴う赤い発疹が生じる慢性の皮膚病です。皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)が異常に早くなってしまう結果、フケのような皮むけ(鱗屑:りんせつ)がポロポロと剥がれ落ち、精神的な負担を感じる患者さんも多い病気です。
この病気は生まれつきの体質にストレスや食生活などの環境要因が合わさって発症するとされ、慢性的に良くなったり落ち着いたりしますが、完治することは難しい病気です。適切な治療で症状をコントロールして、良い状態を保つこと(寛解:かんかい)を目指せるので、治療を継続することが大切です。
尋常性乾癬の原因
完全には明らかになっていませんが、生まれ持った体質(遺伝的素因)に以下のようなさまざまな環境要因が加わって発症するとされています。
尋常性乾癬に関係する環境要因・悪化因子
- ストレス・疲労
- 食生活:糖尿病、脂質異常症、肥満などが要因となることがあります。
- 感染症:歯周病や扁桃腺炎など
- 薬剤:高血圧の薬、抗生物質、痛み止めなど
- 妊娠 など
尋常性乾癬になりやすい体質について
尋常性乾癬を発症しやすい体質は遺伝することが知られていますが、100%遺伝するわけではありません。
家族内での発症はおよそ5%程度と言われており、過度に心配する必要はありません。
尋常性乾癬の症状
皮膚の様々な部位に、円形や地図のような形をした赤い発疹が現れ、その上に白っぽいフケのような皮むけがくっついていることが特徴です。
約半数の患者さんでは痒みを伴い、ときにひりひりした痛みを感じる人もいます。
|尋常性乾癬の好発部位
尋常性乾癬の皮膚では、症状が出ていない部位を掻いたり傷つけたりすると、そこに症状が出てくることがあります。これを「ケブネル現象」といい、尋常性乾癬以外にもいくつかの病気で同様の現象がみられます。
このケブネル現象により、慢性的にこすれなどの機械的刺激を受けやすい部位に症状が出やすいという特徴があります。こすったり掻いたりすることで悪化してしまうため注意が必要です。
尋常性乾癬の症状が現れやすい部位
- 頭部:特に生え際などに症状が強く出ることがあります
- 肘・膝:きつい服装で悪化することがあります
- おしり
- すね など
乾癬の病型
乾癬は症状により5つの種類にわけられます。尋常性乾癬以外にも以下のような病気があり、すべてを合わせると日本にはおよそ40万人の患者さんがいると言われています。ときにいくつかの病型が混在したり、移行することがあります。
- 乾癬性関節炎(関節症性乾癬):皮膚の症状に加えて、関節の痛みや腫れなどの症状を伴う
- 滴状乾癬:1cm程度までの小型の発疹が多発する。子供に多く、上気道感染症(β溶連菌)をきっかけに発症することがある
- 膿疱性乾癬:発熱や倦怠感を伴い、急激に全身の皮膚が赤くなり、膿疱(白い水ぶくれのようなもの)が多発する
- 乾癬性紅皮症:乾癬の皮疹が全身に広がり、皮膚全体が潮紅状態(赤みを帯びること)になる
尋常性乾癬の治療
尋常性乾癬の治療には外用薬、内服薬、紫外線治療、生物学的製剤など、さまざまなものがあります。
患者さん一人ひとりの症状や悪化因子、生活上の悩みに合った治療を行っていくことが大切です。
尋常性乾癬は完治することは難しい病気ですので、なによりも大切なことは患者さんが継続して積極的に治療に取り組むことです。
症状の変化があったとき、なかなか良くならないとき、医師の指示通りにお薬が塗れない・服用できないときなどにも気軽に相談できるよう、定期的にかかりつけの皮膚科を受診しておくようにしましょう。
外用薬
|ステロイド外用薬
主に炎症や赤み、かゆみを抑えるために使用されます。効果の強さによって5つのランクに分けられ、症状の強さや使用する部位に応じて使い分けられます。使用する部位や薬の強さによっては塗布部位の血管拡張が起こったり、皮膚が薄くなったりすることがありますので、症状に合わせて上手に使うことが大切です。
外用が難しい頭皮の症状に対しても、シャンプーのように使えるものや、ローション・ゲルなどさまざまな剤形のものがありますので、使いやすいものを処方してもらい無理なく外用を続けられるようにしましょう。
|ビタミンD3外用薬
主に皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)の異常を抑え、正常な皮膚に導く効果があります。フケのような皮膚の皮むけ(鱗屑)に特に効果が期待できますが、効果が出るまでに時間がかかるため、根気よく続けることが大切です。
また、使用する量や部位などによっては高カルシウム血症の副作用が見られることがあります。「食欲がない」「だるい」「口が乾く」などの症状がある場合は医師に相談しましょう。
|ステロイドとビタミンD3の配合外用薬
上記ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬の効果を併せ持つ塗り薬です。高い効果が期待でき、外用の手間が少なく済みますが、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬の両方の副作用に注意が必要です。
内服薬
|PDE4阻害薬(オテズラ:一般名アプレミラスト)
乾癬の発症や悪化には免疫作用の過剰な働きが関わっていると言われています。
この内服薬は、それら免疫に関わるもののうちPDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素の働きを抑えることで乾癬による皮膚症状や関節炎などを改善します。
副作用として、5%以上の方に吐き気や下痢、頭痛などが生じることがあります。そのため、最初は少ない量から始め、徐々に量を増やして体を慣らしていきます。
|その他の内服薬
上記の他に、角化症治療薬(ビタミンA誘導体)、免疫抑制薬、抗リウマチ薬などが治療に用いられることがあります。
これらの薬は比較的強い副作用のリスクがあるものや一定期間の避妊が必要なもの、定期的な採血や血圧測定が必要なものなどがあるため、医師と相談しながら慎重に使用していく必要があります。
光線(紫外線)療法
光線療法・エキシマライトは、特定の波長の光を用いた治療法の一つです。この光線により、乾癬の皮膚で起きている過剰な免疫作用を抑えることができます。
生物学的製剤
生物学的製剤は、乾癬の炎症に関わる「サイトカイン(免疫機能に関わるタンパク質)」の働きを弱めることで乾癬の症状を抑える薬剤です。現在のところ、皮下注射のものと点滴のものの2種類があります。
これまでの治療で効果が見られない患者さんが主な対象になります。
この薬剤は重度の皮膚症状や関節の炎症などにも高い効果が期待できる一方、病原菌に対する免疫も抑えてしまうことがあるため、感染症にかかりやすくなる可能性があります。主な副作用は、のどの痛みや咳、発熱などのかぜ症状、発疹やかゆみなどのアレルギー症状、疲れやすくなる、体がだるくなる、などがあります。
日常生活で気をつけること
尋常性乾癬は環境やストレス、体調などにより悪化することがあります。そのため、生活習慣や体調管理に注意することは治療と同じくらい大切です。
下記の注意点を覚えて、できることから少しずつ実践してみましょう。
- 皮膚への刺激を避けるようにしましょう
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尋常性乾癬は衣服のこすれや皮膚を掻いたりすることで症状が悪化します。
できるだけ掻かないようにして、かゆいときは保冷剤や塗らしたタオルで冷やしましょう。
衣服はゆったりした柔らかい素材のもの、下着は綿のものを着用すると良いでしょう。 - 乾燥に注意しましょう
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一般的に、尋常性乾癬は夏に症状が和らぎ、冬に悪化しやすくなります。
特に冬は乾燥しやすいため、保湿剤などをこまめに塗ることが大切です。外用の際には擦り込むように塗らないよう注意しましょう。 - 日光浴をしましょう
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光線(紫外線)療法で尋常性乾癬が改善することからもわかるように、尋常性乾癬は日光にあたると症状が良くなることが多いため、天気の良い日にはなるべく日光浴をすると良いでしょう。
ただし、急激な日焼けは皮膚を刺激しますので、徐々に始めるようにしてください。 - 風邪や虫歯に注意しましょう
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尋常性乾癬は、感染症にかかると悪化することがあります。普段から手洗い・うがい・歯磨きなどを心がけてください。
また、タバコを吸うとのどを痛め、風邪や扁桃炎にかかりやすくなりますので、できるだけ喫煙は控えましょう。 - 野菜や魚などを多くとるようにして、バランスの良い食事をこころがけましょう
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カロリーの高い食事(肉類・脂肪分)は乾癬の症状を悪化させ、カロリーの低い食事(魚類・野菜)は症状を改善させると言われています。
また、香辛料などの刺激の強い食べ物やお酒はかゆみを悪化させることがあるので、なるべく控えるようにしましょう。 - 適度な運動をこころがけましょう
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肥満や生活習慣病と乾癬の関連が指摘されています。
適度な運動は、適正な体重を保つだけでなく、リラックスやストレス解消にも役立ちます。
積極的に運動・スポーツに取り組むと良いでしょう。 - やさしく皮膚を洗って清潔に保ちましょう
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毎日入浴をして清潔を保ちましょう。
ただし、ゴシゴシこすり洗いをしたり、体を温めすぎたりすると悪化の原因になりますので注意しましょう。
入浴後はこすらず優しくタオルで体を拭き、できるだけ早めに薬を塗るようにしましょう。
尋常性乾癬の Q&A
- 乾癬は治らないの?
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乾癬になりやすい体質(遺伝的素因)が変わることはありませんが、根気よく治療を続けること、生活習慣を少しずつ改善することで症状が落ち着いている状態を長期間保つことができます。
- 乾癬は他人にうつるの?
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乾癬の発音 “かんせん” が “感染” をイメージさせることから、乾癬が人にうつる病気だと誤解している人もいます。
乾癬が人から人にうつることはありませんので、ご家族や友人、周りの人にも正しい知識をもってもらうことが大切です。
プールや温泉などに一緒に入っても、絶対にうつることはありませんので安心してください。
- 生物学的製剤で完治するの?
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生物学的製剤は効果の高いお薬ですが、あくまでも症状を抑える対症療法です。
生物学的製剤で症状が安定した後も、定期的に外用療法を行って良い状態を維持することが大切です。
- 温泉は乾癬に良いの?
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温泉に入ることで乾癬が良くなるという報告はありますが、その効果については科学的に証明されていません。
また、皮膚が温まりすぎることでかゆみが悪化しますので、過度な入浴は避けてください。
- 美容院・理容院に行きにくい
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馴染みのお店を決め、担当の美容師さん・理容師さんに乾癬について理解していただけるようにすると良いでしょう。洗髪や散髪の際に、頭皮にあまり刺激を与えないように配慮してもらえるように伝えておきましょう。
また、好きなヘアスタイルで問題ありませんが、髪型に迷われている方は髪は短めのほうが皮膚への刺激が少なく、日光にも当たりやすいので乾癬の症状には良いといえます。
